転倒年間1000万人!いますぐできる対策とは

 理学療法士の得原です。すっかり温かくなって、外出する機会も増えてきたのではないでしょうか。冬の間に縮こまった身体を動かす良い機会です。しかし一方で、動き出せば増えるのが転倒です。今回は、転倒予防の隠れた課題である、屋内の環境について考えてみたいと思います。

 厚生労働省の「国民生活基礎調査」や、消費者庁の「高齢者の事故防止等に関するアンケート」によると、年間1000万人の高齢者が転倒し、その3割程度が骨折しているそうです。転倒予防がいかに喫緊の課題であるか、ということを考えさせられます。
 また意外なことに、高齢者の転倒事故の約7割は屋内で起きています。車や歩行者とすれ違う道路や、不整地の公園など、一見転びやすそうな屋外環境ではなく、自宅や施設など慣れ親しんだ場所のほうが危ないのですね。よく、40代・50代のお父さんが運動会でアキレス腱を切った、という話を聞きますが、「大丈夫」「これくらいはできるはず」と思う油断が転倒に繋がると考えられています。理学療法士の視点で見ると、これは認知と身体機能とのギャップが大きくなっている状態です。脳が記憶している運動経験と、実際の筋力や関節の動く範囲にズレが生じているということです。どんなに筋力維持を心がけていても、身体機能は年齢とともに衰えていきますから、転倒予防には「転ばない身体」とともに「転ばない環境」について考える視点が必要不可欠なのです。実際、病院などの医療現場では、まずは患者さんの身体能力に合わせた環境調整が行われます。不備による転倒で二次障害を負ってしまっては元も子もありませんから、まずは環境調整を行って転倒因子を減らすのですね。筋力アップには時間がかかりますが、環境調整はすぐに取り組めますから、下記の具体例を参考に、明日にでも自宅内・施設内をチェックしていただきたいと思います。

 家庭内や介護施設の環境整備として、まず最優先かつ簡単に取り組めることは、床面の片付けです。物が置いてある、カーペットがめくれている、電気コードが生活導線を横切っている、など、「予期せぬわずかな段差」を解消します。介護施設でしたら、ベッド周辺に布団や私物が落ちていないか、食堂やトイレまでの導線に障害物がないか、確認してください。認知症病棟などの場合には、センサーマットをしっかり床に固定することも大切です。また、自宅でしたら、居室内に敷かれている布製品の様子に特に注意してください。目安として「掃除機をかけやすい家かどうか」をイメージしてもらうとよいでしょう。生活をしていると、物は動きます。ぜひ定期的に、部屋の中を見渡してみてください。

<参考資料>
・消費者庁HP『令和5年度「高齢者の事故防止等に関するアンケート調査」』https://www.caa.go.jp/policies/future/project/project_012

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この記事を書いた人
得原藍

得原藍

理学療法士、修士(学術)。総合病院・訪問リハビリステーションでの勤務を経て、バイオメカニクスの分野で修士号を取得。その後理学療法士養成校の教員として運動科学の授業を担当。現在は大学や民間のトレーナー・インストラクター養成機関で講義を持ち、運動関連企業や運動教室等のプログラム・デザインも手掛ける。

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