続かないのが人間だから。介護現場で利用者の運動習慣をつくる「再開力」の育て方

こんにちは。理学療法士の佐野です。現場経験と組織づくりの知見から、介護の現場がもっと良くなるヒントを皆様と考えていきます。

今回は、「どうすれば利用者の方に継続的に運動を行ってもらえるのか」というテーマで、運動継続のためのヒントをお話しします。

「利用者さんに運動を続けてほしいけれど、なかなか定着しない……」

そんな悩みを抱えるスタッフの方は多いのではないでしょうか。しかし、他人に対してそう思うのはもちろん、自分自身に矢印を向けてみてください。私たちだって、ダイエットや筋トレ、読書など、「身体や将来に良い」と分かっていることほど、三日坊主で終わってしまいがちですよね。

そもそも人間という生き物は、本質的に「続けることが苦手(嫌い)」な生き物なのです。
脳の仕組みとして、現状を維持しようとする本能(ホメオスタシス)が働くため、私たちは新しい習慣を始めること自体に強いストレスを感じるようにできています。

だからこそ、利用者さんと接するときはまず、「続かないのが当たり前」「やめたくなるのが普通」という前提に立つことが大切になってきます。「なんでやってくれないんだろう」と責めるのではなく、人間の本能として受け入れることからスタートするのです。

その上で、私たち介護者やリハビリ提供者、そして施設としてできることは何でしょうか。
私は、運動に対しての「再開力」を高めてあげることだと考えています。

続けるのが苦手な人間にとって重要なのは、「途切れずにやり続けること」ではなく、「一度やめてしまっても、いかに再開のハードルを下げられるか」です。
この再開力を高める工夫には、大きく分けて3つの観点があります。

1. 物理的要因(環境やモノの工夫)
運動に取り組みやすくしたり、楽しくなる物品を用意したり、運動を阻害しない施設の環境を整えることです。例えば、歩行練習のルートになる場所では、なるべく床に物を置かないようにする、利用者の方々が集う場所に綺麗な花や季節の飾りを置いて、そこまで「歩く楽しさ」を演出する、といった工夫です。

2. 時間的要因(長さやタイミングの工夫)
「1回30分」のようなまとまった時間ではなく、1回あたりを「3分」など短くして取り組むハードルを下げることです。また、「ご飯の前後」「お風呂の待ち時間」など、その人にとって生活リズムに組み込みやすいタイミングを狙うのも効果的です。

3. 社会的要因(つながりや人の工夫)
運動をサポートしてくれる人の存在や、一緒に取り組む仲間を見つけてあげることです。「スタッフの〇〇さんが応援してくれるから」「同じテーブルの〇〇さんもやっているから」といった人とのつながりが、強力な再開のフックになります。

これらの要因を組み合わせながら、「目の前の利用者さんには何が響くか」「今の施設でどんな取り組みができそうか」をぜひ考えてみてください。

もちろん、どの要因が効果的かは、目の前の人の価値観や施設の状況によって全く異なります。正解を一つに絞る必要はありません。自分たちに合う組み合わせを、宝探しのようにどんどん試していってもらえると嬉しいです。

スタッフの皆様が「続ける重圧」から解放され、利用者さんと一緒に「またやってみようか」と笑顔で一歩を踏み出せる現場を応援しています。

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この記事を書いた人
佐野和也

佐野和也

理学療法士。訪問リハビリや整形外科クリニックの現場で経験を積み、その後は企業の組織づくりの世界へ。「どうすれば人は前向きに行動したくなるのか」の視点を軸に、運動習慣の定着や会社組織のエンゲージメント向上などのテーマで、知見と現場のリアルを翻訳する取り組みを行っている。

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